脳と短眠・長眠

脳と短眠・長眠

通常、睡眠時間が減ると集中力や学習力が低下し、挙句の果てには幻覚や幻聴に悩まされます。

しかし、ナポレオン・ボナパルト (1769/8/15 - 1821/5/5) のように、世の中には 1 日わずか 3 時間の睡眠でも日常生活に支障ない人がいます。

「睡眠時間が少なくても大丈夫な家系」が存在することから、「睡眠時間が少なくても大丈夫な遺伝子」が存在するものと考えられています。

ウィスコンマンシン・マディソン大学のトノーニ博士は、2005 年の「ネイチャー」で蝿の短眠型遺伝子について発表しました。

蝿の遺伝子のうち 6000 個を少しずつ変異させたときの睡眠状態を調べたところ、短眠型遺伝子が発見されたのです。

トノーニ博士が「ミニ・スリープ」と名付けた短眠型遺伝子に異常があると、睡眠時間が 70 % も減り、しかも運動能力や知能には変化が認められませんでした。

ミニ・スリープは細胞のカリウムイオンの動きを安定化させ、神経細胞の活動を整える働きをしているようですが、詳しいことはまだ分かっていません。

人間と蝿の遺伝子や睡眠には以下のような類似点があるので、人間にも同様の短眠型遺伝子があっても不思議ではありません。

  • 蝿の遺伝子は人間の約半分の約 13000 種類で、その 60 % は人間とほぼ同じ機能を持っている
  • 人間の睡眠薬は、蝿にも有効
  • 人間も蝿も、昼でも外界からの刺激がないと寝入る傾向が強くなる
  • 人間も蝿も、若い方が睡眠時間が長い
  • 人間も蝿も、睡眠不足になると能力が低下し、翌日たくさん寝る

将来、カリウムイオンを制御する薬が開発されれば、短眠型遺伝子を持っていない人でも睡眠時間を短くできるかもしれません。

短眠型遺伝子と逆の働きをする長眠型遺伝子も存在するのでしょう。