脳と体内時計

脳と体内時計

1 日が 24 時間周期なのは、地球が自転しており 24 時間周期で昼と夜を繰返すからですが、北極や南極周辺で太陽が沈まず昼しかない白夜の時期でも 1 日は 24 時間周期です。

しかし、人間が光・音・温度などの条件が変わらない空間にずっといると、1 日は 25 時間周期になります。

人間を始めとするほとんどの生物は毎朝、太陽光を浴びることで体内時計の 25 時間周期を地球の自転の 24 時間周期に矯正しているのです。

光を浴びるのが朝の起床後だと体内時計を戻す位相前進になり、夜の就寝前だと体内時計を進める位相後退になります。

人間と同じく 25 時間周期の体内時計を持つハムスターを用いた実験では、3 時間の位相後退は 1 時間の光照射 1 日で終了するのに対し、4 時間の位相前進には 3 日が必要でした。

このように、位相前進より位相後退の方が簡単であるため、就寝前に照明やテレビなどの強い光を浴びると翌朝の起床が辛くなります。

不規則な生活を送って昼夜が逆転した場合、いきなり早起きするのは最悪で、毎日 1 時間ずつ早起きして太陽光を 2 時間ずつ浴びて 1 週間ほど掛けて通常の生活に戻るのが良い、とされます。

朝 7 時に起床したときに身体活動が活発になる時間帯
項目 時間帯
記憶力 11 〜 12 時
筋力 15 〜 16 時
肺活量 14 〜 19 時
気分の良さ 11 〜 16 時
体温 15 〜 18 時

体内時計には、視交叉上核(しこうさじょうかく)が大きく関わっています。

視交叉上核は脳の奥底(左右の目の網膜から伸びた視神経が視床下部で交叉している所のすぐ上)にあり、人間でも 2 mm 程度の小さい部位です。

朝、視交叉上核が太陽光を感知して松果体に信号を送ると、松果体は「時計ホルモン」と呼ばれるメラトニンを分泌します。

メラトニンは約 14 時間後に睡眠を促すホルモンで、血流によって体内の隅々まで時間の情報を運ぶのです。

ネズミの視交叉上核を摘出し、酵素処理を施して神経細胞をほぐしても、シャーレに入れた神経細胞は栄養さえ与えれば活動を続けます。

シャーレの中の神経細胞が 20 〜 25 時間周期のリズムを刻んでいたことから、様々な周期の神経細胞が結合して 1 つの大きな周期になると考えられています。

ただし、視交叉上核のある脳だけでなく、肺や肝臓や筋肉の細胞を培養しても同じようなリズムが現れるという実験結果もあるので、体全体の細胞が同期することで体内時計になるのかもしれません。