脳にタコ?

脳にタコ?

ペンを使うと指にタコができるように、脳にもタコができるのではないか、という説があり、理化学研究所(理研)・日本将棋連盟・富士通が、共同で棋士の脳活動を研究しています。

日本将棋連盟会長の米長 邦雄・永世棋聖は 40 代の頃、自分が勝てなくなった若手棋士たちの新しい戦法について研究し、何時間も集中して普段とは異なる思考法を続けたところ、「右の頭の上から 2 割くらい下がった辺りに、ピンポン玉の半分くらいのものが埋め込まれたような感触があった」「ゴルフや山登りで筋肉が痛くなるような、痛いというより、脳が膨らんだような感じだった」そうです。

この話を聞いた理研の研究者が、「脳ダコ」と表現して研究を始めました。

動物実験では脳のよく使われる部位が拡大する現象が認められていて、人間でも脳の働きで挙げたタクシー運転手やキーボード奏者などの例がありますが、先天的に該当部位が大きかったのかその職業で後天的に大きくなったのかまでは断定されていません。

2004 年のジャグリングを扱った研究では、3 ヵ月の訓練前後の脳の変化を調べて以下の結果が得られ、脳ダコに類するものと考えられています。

  1. 大脳の視覚や空間把握に関する領域付近で活発に活動する部分が 3 % 広がった
  2. 訓練終了後 3 ヵ月が経過すると、広がった部分が半減してジャグリングも下手になっていた

将棋は以下の理由から脳ダコの研究に適している、とされました。

  • ルールが明確である
  • 段位があり、熟練度を客観的に評価できる
  • 棋士たちは、子供の頃から奨励会で訓練をしている

理研の機能的磁気共鳴断層撮影装置 fMRI (functional Magnetic Resonance Imaging) に棋士が横たわり、ゴーグル状の画面に投影される将棋の問題を考えるときの脳の様子を記録します。

大脳の長期で高度な思考訓練と、小脳の無意識に最善手を判断する閃きとの結び付きを理解し、棋士の直感や形勢判断における思考過程を解明するため、2 年間の実験期間の後半にはタイトル保持者も協力が予定されています。

理研脳科学総合研究センター領域ディレクターの田中 啓治さんは、以下の仮説を立てています。

  1. 問題に取組むとき、一般人に比べて脳の広い領域が活動している
  2. 小脳など脳のある領域が、一般人より物理的に大きくなっている